女性の病気について

耳鳴り

自律神経失調症で病院通いのA子さん(49歳)は、最近"耳鳴り"に悩まされている。朝から晩までそれこそ四六時中、ときには強く、ときにはかすかに「キーン」とか「ジーン」とか聞こえてくる。両耳から聞こえてくることが多いが、頭の中から聞こえてくるように感じることもある。疲れたときやイライラしたときに強くなる。幸い難聴はない。近所の耳鼻科医を受診したが原因が分からず、大学病院を紹介された。あれやこれやと専門的な検査を受けたが結局原因が不明で、担当医から原因不明の、しかし心配のない耳鳴りだと説明された。こんなに耳が鳴るのに原因不明とは腑に落ちない・・。

こんな悩みを抱えているご婦人は少なくないであろう。50~60歳台の女性に多いようだ。
耳鳴りは「外からの音刺激がないのに、耳の中で、時には頭の中で、音がきこえる」状態である。自分だけに聞こえる場合(自覚的耳鳴)と他人にも聞こえる場合(他覚的耳鳴)とがあるが、前者が圧倒的に多い。A子さんの場合も自覚的耳鳴である。

耳鳴りは、聴感覚細胞に異常のあるとき、内耳の蝸牛神経が侵されたとき、聴覚路という中枢神経が障害されたときなどに生じるが、自覚的耳鳴りでは障害部位が特定されないことが少なくない。耳鳴りを訴える人は意外に多く、耳鼻科外来受診者の5~8%を占めるという調査がある。正常者でも防音室では94%の人が耳鳴りを感じたという報告もあり、耳鳴りはそれ自体必ずしも病的なものとは言えないようだ。

特に、A子さんのように、自律神経失調症のような病気の人ではその発生頻度が高くなる。
自律神経失調症は身体全体に根をはっている自律神経(交感神経と副交感神経)の働きのバランスが崩れた状態で、全身倦怠感、頭痛、頭重、めまい感、肩凝り、動悸、息切れ、胃部不快感、便秘、下痢、頻尿などあらゆる臓器の症状が多彩に出現する。症状が一定しないところから不定愁訴とも言われ、このような人では耳鳴りを訴えることが少なくない。
理由はよく分かっていないが、うつ状態で耳鳴りが増えることも知られている。

それでは治療はどうしたらよいのか。
原因が分かれば、当然その治療をすることになる。しかし、自覚性耳鳴りでは原因不明のことが多いことから、様々な治療が試みられている。ビタミン剤、自律神経調整薬、抗不安薬、時に抗うつ薬が使用されるが効果は不定である。局所麻酔薬の静注、星状神経節ブロックなどがなされることもある。悪性の病気でないことに納得して、「耳鳴りと共に生きる」ことで軽快する人もいる。中には偽薬(効果のない筈の薬)が効く人もいる。

その中で、いま最も注目されているのが、耳鳴再訓練療法(TRT)という治療法である。
これは耳鳴りに慣れる訓練をつむ治療法で、耳鳴りを感じてもそれが気にならない状態をつくる方法である。このような心境になるためには、耳鳴りに対する過剰なとらわれや対応を修正する必要があり、そのためには認知行動療法的な手法(感じ方や考え方を改めて、新しい対応、態度をとる)が用いられる。
A子さんは今、TRTを受けようと考えている。