女性の病気について

ほてり

「ほてり」は更年期障害の症状としてよく知られています。典型的なものは、突然胸のあたりから上半身にかけて強い熱感が広がります。同時に発汗や動悸を伴うことも多く、汗の程度はジワーッと汗ばむ程度から滝のように汗がふきでるというものまで様々です。頭や首のうしろなど、普段あまり汗をかかないところに汗をかくのは更年期の特徴ではないかと思います。ほとんどは数分でおさまりますが、その後、急に身体が冷えて、今度はゾクゾクとした寒気を感じることもあります。回数は数日に1回のこともあれば、1時間に1~2回と頻回に出現することもあります。緊張した時や感情がこみ上げてきた時におこりやすい傾向があります。睡眠中におこることもあり、重症の場合には、夜間に何度も寝間着を着替えなければならなくなります。

更年期になぜ「ほてり」の症状がおこりやすくなるのか、その詳しい機序は実はよくわかっていません。女性ホルモンが低下するとおこりやすくなり、女性ホルモンを補うと劇的に改善するので、女性ホルモンの低下が関係していることは明らかですが、同様に女性ホルモンが低下している若い女性の無月経の場合は、通常「ほてり」の症状は見られません。更年期の場合は、女性ホルモンが低下するだけでなく、二次的に自律神経が不安定になるためにこのような症状がおこるのではないかと考えられます。

それでは「ほてり」の症状が見られたら更年期障害か、というとそうとも言い切れません。鑑別しなければいけない病態として、甲状腺機能亢進症があります。この疾患は身体全体の代謝が亢進するため、発汗や動悸が見られるのが特徴です。また、女性ホルモンの低下とは関係のない原因でおこる自律神経失調症の場合にも同じような症状がみられます。従って、更年期障害の「ほてり」であると診断するためには、年齢や月経の状態、女性ホルモンの血中濃度などを調べて更年期にさしかかっていることを確認する、と同時に、甲状腺機能亢進症など他の疾患を除外することが必要になります。

更年期障害の「ほてり」は、月経が不順になるころから出現し、閉経前後にピークがあり、閉経後1年くらいでおさまってくるという場合が多いようです。中には、閉経後10年以上続く場合もありますが、その頻度は稀といってよいでしょう。日常生活に支障がなければ放置しても構いませんが、程度が強く、日常生活に支障をきたす場合は治療します。前述のように女性ホルモンを補うホルモン補充療法が大変有効ですが、漢方薬や自律神経調整薬などでも症状を緩和することができます。欧米では、女性ホルモンが使えない乳癌の女性に対して、坑うつ薬が有効であることが確認されています。