女性の病気について

代謝・内分泌疾患(甲状腺疾患・DM)

(1)甲状腺疾患

甲状腺は、いわゆる“喉仏(のどぼとけ)”の下部に蝶が羽を広げたような形で存在する臓器で、そこから生体内の新陳代謝を促す働きのある甲状腺ホルモンが分泌されます。甲状腺ホルモンは哺乳類や両生類にも存在し、それらの発育や成長そして生命維持に欠くことの出来ないホルモンであるため、その分泌量には性差や加齢による差を認めません。
甲状腺に関係した病気は、大きく分けると以下のようになります。

  1. 甲状腺機能亢進症
    甲状腺ホルモンの分泌量が異常に増えることで、体の中の新陳代謝が亢進し様々な症状が認められる病気の総称です。その中で代表的な病気は、バセドウ病でありますが、これは男女比約1:4~5で女性に、年齢的には20才代から40才代に多いという特徴があります。
    代表的な症状としては、異常な暑さと発汗、全身倦怠感や易疲労感、手の震えや体の揺れる感じ、眼球の突出や複視(物が二重に見える)、頻脈や不整脈,情緒不安定・神経過敏・集中力の低下などの精神症状があげられます。全身的に多種多彩な症状を認めるため、他の病気との鑑別が難しく初めから診断がつかないことも少なくありません。最終的には、血液検査で甲状腺ホルモン値を測定することで診断に至ります。
  2. 甲状腺機能低下症
    甲状腺ホルモンの分泌量が異常に減少することで、体の中の新陳代謝が停滞し様々な症状が認められる病気です。
    その中で代表的な病気は、甲状腺に慢性的な炎症を来す橋本病でありますが、40才代から50才代の女性に多いという特徴があります。代表的な症状としては、動悸・息切れ、からだのむくみ、四肢の冷感、動作が緩慢、意欲低下や記名力低下といった精神症状などが挙げられます。その他にも、血液中の総コレステロールが300mg/dl以上となるような脂質異常を呈することがあります。また年代的に更年期の不定症状ともオーバーラップする症状があるため、当初更年期障害として治療されてしまうケースもあります。この病気も血液検査で甲状腺ホルモン値を測定することで診断に至ります。
  3. 結節性甲状腺腫
    甲状腺内に腫瘤が出来る病気全般を指します。正常な状態では外から触れようとしても判らない甲状腺が、腫瘤が出来たことにより外見上も判るようになります。その多くは甲状腺機能には影響しないものですが、時に悪性腫瘍がその原因であることもあり、甲状腺の腫れに気付いたらまず甲状腺の病気を専門とする内科医(内分泌科)の診察を受けることをお勧め致します。

(2)糖尿病

糖尿病は、代表的な生活習慣病の1つであり、現在も患者数は男女共増加傾向にあります。ひとたび発症すると治癒することはなく、そのまま放置すると糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、神経障害などの合併症を併発し、著しい生活の質(QOL)の低下を来します。
糖尿病の発症要因としては、大別すると遺伝的要因と環境要因がありますが、わが国の場合は「生活習慣病」の名の通り、日常的な生活習慣という環境要因の方が重要です。

発病まもない頃や高血糖の程度が軽い場合には無症状のことが多く、検診や人間ドックで偶然見つかることも少なくありません。
病気が進行して来ると、口の(異常な)渇きとそれに伴う多飲・多尿、全身倦怠感、易疲労感、体重の急激な減少、女性の場合は外陰部のかゆみや繰り返すカンジダ性腟外陰炎などが挙げられます。
診断に当たっては、上記に挙げた症状の有無と共に、空腹時の血糖値やブドウ糖を負荷することでの血糖値の推移などを測定し、総合的に判断致します。