性感染症
性感染症とは、性交(セックス)あるいは性交類似行為(キス、オーラルセックス、アナルセックスなど)によって人から人へ感染する疾患を言います。英語では、STD(Sexually Transmitted Disease)が用いられてきましたが、これは「性病」のように一般に発病した状態を指します。クラミジアやHIVなど多くの感染症は自覚症状がないまま感染を拡大させてしまうことから、最近ではSTI(Sexually Transmitted infections)ということが多くなりました。
原因には、10-5mmほどの小さなウィルスから、細菌、寄生虫や原虫などがあります。
主な性感染症は、クラミジアやヘルペス、尖圭コンジローマ(ヒトパピローマウィルス(HPV)より生ずる)、淋菌、梅毒、肝炎、トリコモナス、毛じらみ、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)/エイズなどがあります。
感染経路は大抵の場合、感染したパートナーとの膣、口、肛門を介した性交で起こりますが、他にもキスや濃厚な体の接触によるもの(毛じらみ症、疥癬、伝染性軟属腫など)や、妊娠および分娩時の母子間(梅毒、ヘルペス、クラミジア感染症、淋菌感染症、HIV感染症、HPV感染症など)、母乳(HIV感染症など)、汚染された医療器具(HIV感染症など)があります。
症状は多彩で、膣や陰茎からの分泌物や陰部や口の潰瘍やできもの(腫瘤やしこり)、排尿時や性交時の痛みのほか掻痒感などがあります。ただクラミジア感染症などのように、ほとんどがはじめ無症状のことも多く、これが性感染症を拡げる大きな要因となっています。感染が進むと微生物によっては、血流を介して他の臓器に感染を広げ生命が脅かされることがあります。これにはHIVによるエイズや梅毒による心血管系や脳への感染症、HPVによる子宮頸がん、直腸がん、肛門がん、咽頭がんなどがあります。また女性の場合、膣から入った微生物が子宮・卵管・腹腔内へと侵入して炎症を起こし、卵管炎や腹膜炎など骨盤内炎症性疾患を生ずることもあります。性成熟期の女性では、不妊症や子宮外(異所性)妊娠の原因にもなります。
予防としては、性交時コンドームをきちんと着用することや出血の恐れがある性行為をしないといったことがありますが、すべての性感染症が防げるわけではありません。気になる症状がある場合は早期の受診(診療科:産婦人科や泌尿器科、性病科、皮膚科など)や、複数のパートナーと性交がある場合などの定期検査も勧めます。
診断は、医師の視診のほか血液検査や尿検査、膣や陰茎からの分泌物を採取して行います。1つの性感染に罹患している場合、他の性感染症にも同時に感染する確率が高くなるため、検査も複数行うことも多いです。また、HIVや梅毒検査など保健所など公的機関において無料で行うことが出来るものもあります。
治療薬を服用することで病気の治癒だけでなく、病気の発症を予防することも出来ます。例えばHIV陽性が判明した早期の段階で服薬を開始すれば、エイズ発症を防ぐことが可能です。また性感染症が分かった場合、必ずパートナーにも伝えて検査や治療を受けるよう勧めて下さい。そうでないと、せっかく自分が治療しても、再感染(ピンポン感染)してしまいます。
性感染症は決してまれな疾患ではありません。知識を持つことが重要です。特にグローバル化が進む近年、日本では少なくなっていた梅毒などの感染症が急増しております。性的なことの相談はためらいがちですが、早期の治療が大切です。日頃からパートナードクターをもつとよいでしょう。