女性の病気について

子宮脱

子宮が正常の位置より下降したものを子宮下垂といい、これがひどくなり外陰部より子宮の一部または全部が脱出するのを子宮脱といいます。従って子宮の下垂と脱の違いは程度の差です。子宮の前方は膀胱、後方は直腸とそれぞれ接しており、多くの場合子宮が下降するときは、腟・膀胱・直腸などの臓器を引き連れて下がります。ひどくなると腟は、それにつられて裏返ってしまうこともあります。

症状

軽度の子宮下垂の状態では、自覚症状はほとんどありません。ひどくなると、お腹に力がかかったときに何かが出てくる感じがします。歩行時、重いものを持った時、入浴時やしゃがんでいる時などに気付きます。さらに症状が進むと、ピンポン球くらいの、丸くて固いものが外陰部に触れるようになります。これは、子宮が腟に顔を出している子宮腟部です。もっとひどくなると、前述したように、子宮が子宮腟部を先頭に腟壁とともに周囲の臓器も下がり、裏返った状態になってしまいます。また、子宮はほとんど下がっていないのに膀胱や、直腸だけが腟壁と一緒に下がってくることがあり、ふわふわした腫瘤として触れます。それぞれ膀胱瘤、直腸瘤と呼びます。
下がった臓器のため、引っ張られた感じや痛み、太ももの間に物がはさまった感じがします。外陰から脱出した部分が、常時下着などに接触しこすれると、赤くなったり、おりものが増えたり、出血したりしますが程度により様々です。排尿障害や排便障害の原因にもなります。

原因

骨盤の下の方は骨盤底といわれ、筋肉や器官や組織をつないでいる結合組織などで出来ており、お腹や骨盤内の内臓を支えています。
子宮脱は、その骨盤底が、分娩や外科手術やその他の原因により障害され内臓を支えきれなくなって起こります。女性の約10%がこれを経験し、多くは経腟分娩経験者といわれています。分娩時に、児が骨盤内を通過するときに骨盤底が損傷され、子宮脱の原因になると考えられます。しかし分娩後すぐに脱になることは少なく、閉経を迎える頃から多くなります。

治療

症状の自覚があって初めて治療を行うことが多いようです。

  • ● 運動療法(骨盤底筋訓練):軽度の子宮下垂には、骨盤底筋訓練と生活習慣改善(減量、便秘の治療など)が行われます。
  • ● 薬物療法:漢方薬、女性ホルモンなどがありますが、効果は明らかではありません。
  • ● ペッサリーの挿入:中等度以上の子宮下垂および子宮脱に行われます。腟内のペッサリーは内臓が脱出しないように支えます。最近のリング状のペッサリーは、シリコンで出来ておりソフトで、ハードなものに比べ出し入れ時の痛みがほとんどありません。ペッサリーが腟壁に当たり、そこが発赤したり、帯下が増加したりすることがありますので、定期的な通院が必要です。
  • ● 手術療法:腟式手術、腹腔鏡下手術、メッシュを使う手術などさまざまな方法が行われています。