更年期障害
更年期とは、女性のライフサイクルの中の45歳から55歳の期間にあたります。12か月以上の無月経を閉経といい、日本人女性の平均閉経年齢は約50歳です。この閉経前後の5年間に女性の心身に様々な変化が生じやすいことから、この期間を更年期と呼びます1)。
なぜ更年期に女性の心身に様々な変化が生じやすいのかといいますと、卵巣機能が低下することによるホルモン動態の変化が主な原因です。エストロゲンが大きくゆらぎながら低下することに加え、対人関係などストレスフルな環境因子、ストレスを感じやすい性格などの心理的因子が複合的に影響することにより生じると言われています1) 2)。あるインターネット調査によると、36歳から55歳の女性1358名のうち、更年期に更年期障害のような症状を持っている人は52.3%、50代女性では72.2%であったと報告されています3)。多くの女性が更年期障害のような症状を感じていることがわかります。
それではこの更年期障害とはどのようなものでしょうか。日本産婦人科学会では「更年期に現れる多種多様な症状の中で、器質的変化に起因しない症状を更年期症状と呼び、これらの症状の中で日常生活に支障きたす病態を更年期障害と定義する」としています1)。多種多様な症状とは、大きく3つに分類されます。①「ほてり」「発汗」「のぼせ」などの血管運動神経症状、②「易疲労感」「めまい」「動悸」「頭痛」「肩凝り」「腰背部痛」「関節痛」「冷え」などの身体症状、③「不眠」「イライラ」「不安感」「抑うつ気分」など精神症状を指します1)。多種多様な症状を示すのが更年期障害の特徴ですが、生活習慣病や甲状腺疾患、うつ病などが好発する年齢であり、更年期障害と類似した症状もあることから、これらの症状が器質的疾患によって生じているものでないか、確認しながら治療をすすめていくこととなります。
更年期障害の治療は、更年期障害の原因が卵巣機能の低下だけでなく、環境因子や心理的因子が影響していることをふまえて行われます。治療法としてはカウンセリングや認知行動療法などの心理療法、「ほてり」「発汗」「不眠」などが主な症状の場合にはホルモン補充療法、不定愁訴を訴える場合は漢方療法などが用いられます4)。いくつかの治療を組み合わせて行うこともあります。
更年期症状が感じられた際は、どのような症状であっても、治療を開始する場合であっても、自身の生活習慣と健康を見つめ直す機会とされることをおすすめします。加齢に伴う心身の変化に応じた生活習慣が必要となります。年齢相応の栄養バランスや運動、良質な睡眠、心身のリラックス、規則的な生活リズムに整えるなど、健康的な生活習慣は更年期症状の予防や緩和に効果的です。また、更年期の後におとずれる老年期をより健康的に過ごすことにもつながります。
文献
- 1) 更年期障害の診断上の留意点は. 日本産婦人科学会編集. 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2020. 東京:日本産婦人科学会事務局;180-181. 2020
- 2) 寺内公一:更年期障害の病態. 日本女性心身医学会編集. 最新女性心身医学. 東京:ぱーそん書房; 259-261. 2015
- 3) 山本理史:更年期の実態, 株式会社日本ヘルスケアアドバイザーズ, https://www.tri-stage.jp/data/fileup_s/9999-1080542024.pdf
- 4) 更年期障害への対応は. 日本産婦人科学会編集. 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2020. 東京:日本産婦人科学会事務局;182-184. 2020