子宮奇形(先天性子宮形態異常)
1)子宮奇形とは
子宮の形の先天的(生まれつき)異常をいいます。女性の5%にみられるといわれています。そもそも性の決定には胎児期の発生段階で①染色体の性が決定し(46,XY; 46,XX; 45,Xなど)、②性腺の性(精巣・卵巣など)が決定、最後に③外性器・内性器の性が決定します。その内性器の分化(子宮ができあがる過程)に問題があると子宮奇形が発症します。いろいろな形の異常があります1、2)。
2)子宮奇形の症状
原発性無月経(18歳になっても月経が来ない)、過少月経(経血量が非常に少ない)、月経困難(主に月経痛が強いこと)、周期性の腹痛などの月経異常の原因になります。また、不妊や習慣流産、早産の原因になる場合もあります。分娩の際は、胎位の異常、微弱陣痛などのため帝王切開分娩が多く、胎盤遺残などの異常をきたしやすくなります。一方、何ら月経の異常を認めないことや、妊娠・分娩を無事に行うことも多くあります。
3)子宮奇形の診断
婦人科健診や妊娠初診などで、内診(経腟的診察)や超音波検査で偶然見つかることが多い疾患です。子宮卵管造影、子宮鏡、MRI検査を併用することで、どのような部分の異常であるかが分かります。また、腎臓や尿管の異常を伴うことも多く、造影検査などを行うこともあります。
4)子宮奇形の治療
無症状の場合や、妊娠・分娩において障害にならないと判断された場合には特に何の介入も行いません。不妊や習慣流産などの原因になっていると判断される場合には手術療法が行われることがあります3)。
子宮発育不全
1)子宮発育不全とは
子宮発育不全という病名は、日本産婦人科学会用語集にはなく、病名として確立された概念ではありません。子宮が小さいことや、子宮内膜の肥厚が不十分で不妊症や流産となる場合に、子宮発育不全という診断名を用いることがあります。
2)女性ホルモンと子宮発育との関連
女性ホルモンは胎児期には生殖器の分化に関連し、生後は、自身の卵巣から産生されて、子宮の発育や機能を支配しています。母体と胎盤から生産された多量の女性ホルモンの刺激により、卵管、子宮、腟、大陰唇、小陰唇、陰核などの内・外性器が形成されます4)。生後しばらくは、卵巣はその働きを休止しており、卵巣がその働きを開始した後に初経がきます。以後、閉経を迎えるまでの約40年間、卵巣から産生される女性ホルモンの影響を受けます。子宮の発育は女性ホルモンが正常に産生されていれば、子宮の体部は7㎝ほどの大きさとなります。閉経後、卵巣から女性ホルモンが産生されなくなると子宮は小さくなります。
3)子宮発育不全の原因
器質的に、子宮奇形など先天的な子宮形態異常のために起こることがあります。また、機能的に、癌の治療のため抗癌剤を使用された場合、膠原病などに伴う早発閉経など、女性ホルモンの産生低下することによって起こります。
4)治療
子宮奇形であれば、手術療法が選択されることがあります。また、女性ホルモンの不足であれば、薬物治療として女性ホルモン補充療法が行われることが多いです。
- 1) The American Fertility Society: The American Fertility Society classifications of adnexal adhesions, distal tube occlusion, tubal occlusion secondary to tubal ligation, tubal pregnancy, Müllerian anomalies and inturauterine adhesions. Fertil Steril :49:944-955, 1988
- 2) 日本小児内分泌学会 性分化・副腎疾患委員会:性分化疾患の診断と治. Webtext: 2016年12月1日
- 3) 牧野田 知、藤井亮太、今福紀章:内性器の奇形・位置異常.武谷雄二. 新女性医学大系17 . 東京都:中山書店;254-260, 2002
- 4) 奥山和彦:生殖器系の発生と解剖. 武谷雄二. 新女性医学大系17 . 東京都:中山書店;8-13, 2002