女性の病気について

排卵時期の腹痛・腰痛・性器出血

月経周期の排卵の時期は、下垂体―卵巣系のホルモンの分泌量が大きく変化し、卵巣では約2cmまで膨らんだ卵胞が破れて排卵が起こります()。排卵時には卵巣の膜が破れるために、排卵痛を感じる方がいらっしゃいます。排卵痛は、軽い腹痛のことが多いようですが、なかには腰痛を訴える方もいらっしゃいます。排卵痛そのものは生理的なものですが、ストレスのある方や体質的に緊張しやすい方は痛みが強くなることもあります。痛みが強いときは鎮痛剤を内服します。また、排卵時卵胞が破れた部分あるいは排卵後にできた黄体から腹腔内に出血することがあります。この卵巣出血の場合、強い腹痛・腰痛が出ます。出血が多い場合は、手術が必要になることもあります。

排卵時期のホルモンの変化を図に示します。卵胞の発育とともに増えたエストロゲン(卵胞ホルモン)の作用で、排卵の引き金となるLHサージ(黄体化ホルモンが急激に放出される状態)が起こり排卵します。排卵後、一時的にエストロゲンは下がり、プロゲステロン(黄体ホルモン)が増加します。エストロゲンは子宮内膜を厚くさせ、プロゲステロンは厚い子宮内膜中の分泌腺を増やし、妊娠に適した状態にさせる働きがあります。排卵の時期は子宮内膜に影響を与えるホルモンに大きな変化があるため、時に子宮内膜が剥れて性器出血を起こすことがあります。これが排卵期の出血で、中間期出血ともいわれています。出血は少量で2〜3日間続き,長くても1週間で止まります。中間期出血はホルモンのダイナミックな変化によって起こるもので特に治療は不要です。しかし中間期出血が続くときは、子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮癌などの病気のこともあるので、婦人科を受診し、特に悪性腫瘍がないかなど検査してもらってください。検査で異常がなければ様子をみることになりますが、婦人科でよく相談してください。

図 排卵時期のホルモンの変化

図 排卵時期のホルモンの変化

参考文献

  • 内田明花, 丸山 哲夫:月経を診る-患者満足の外来診療のために 排卵期出血・排卵痛の診断と治療. 産科と婦人科 85:1331-1335,2018
  • 竹林明枝,木村文則,村上節:VI 女性性機能 月経異常症 機能性子宮出血. 別冊日本臨床 領域別症候群シリーズNo.3 内分泌症候群(第3版)III,東京:日本臨床社;188-191,2019