不妊症
不妊症とは生殖年齢の男女が妊娠を希望し、1年間避妊することなく性交渉を行っているにも関わらず、妊娠の成立を見ない場合をいいます。
原因
不妊症の原因は性別によるものは、女性の原因のみ;41%、男性の原因のみ; 24%、男女に原因あり;24%、原因不明;11%とされており女性のみの原因だけでなく、男性の原因によるものも約半数をしめています。原因としては①排卵障害(多嚢胞性卵巣症候群、高プロラクチン血症、ストレス、ダイエット、早発卵巣不全など)②卵管因子(クラミジア性卵管炎、卵管周囲炎、卵管切除後など)③子宮因子(子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮奇形、子宮内腔癒着症、子宮頸管粘液分泌不全など)④免疫因子(抗精子抗体など)⑤男性側の異常(造精機能障害(83%)、精路障害(14%)、性機能障害(3%))⑥原因不明 があります。
診断
ホルモン採血をして、排卵障害の原因を推定、診断します。
経腟超音波にて子宮、卵巣の形態を観察し診断します。
子宮鏡は子宮の内腔を検索して子宮内膜ポリープ、子宮粘膜下筋腫の診断をします。
子宮卵管造影は卵管の通過性、子宮内腔の形態が診断できます。子宮内に1cmほどバルーンをいれ、膨らませ造影剤を子宮内に流入します。X線撮影をし、造影剤が白く見えるため、卵管が通過していれば左右に白く細い管上に造影され、骨盤内に広がる様子が観察されます。骨盤内の癒着や腹痛を伴う場合、クラミジア抗体検査、抗原検査でクラミジア感染症の診断を行います。陽性の場合骨盤内の炎症を引き起こし卵管腫大、卵管閉塞をおこしてしまうことがあります。
精液検査は男性因子の評価に有用です。頸管粘液検査、フーナーテスト(性交後試験)では排卵期の頸管粘液の牽糸性(のびぐあい)が悪いと頸管粘液不良の診断となり、排卵期に性交渉後頸管粘液内に運動精子が少ない、存在しない場合フーナー検査不良の診断となります。
抗ミュラー管ホルモン(AMH)検査は不妊症の原因検索としての検査にはなりませんが、卵巣予備能力をみる検査として行われつつあります。いわゆる“卵巣年齢”と呼ばれる検査です。卵子の質ではなく数を予想する検査です。保険診療外の検査ですが、ご自身の卵子の数の予想が数値で現れることでご自身にあった治療の方針をたてることができ、体外受精の際の排卵誘発の薬剤の選択の目安にもなります。
治療
不妊症の原因を調べながら、明らかな原因があれば治療をしていきます。年齢が上がると共に妊娠率は低下してしまいますが、20歳台~30歳台前半であれば1回の排卵に対する妊娠率は15~20%です。明らかな不妊の原因がわからない場合、タイミング療法を4~6回行っても妊娠に至らない場合は人工受精(精子を濃縮して子宮内まで注入する)、または体外受精-胚移植にステップアップし妊娠を目指します。体外受精-胚移植は経腟的に針を刺し、卵巣から卵子を採取し、体外で受精させ、成長させた受精卵を子宮内に移植する方法です。卵管を経由しないため卵管因子の場合は絶対的な適応ですがタイミング療法や人工受精で妊娠困難な場合も適応になります。
不妊症の定義は1年妊娠がなければとなっていますが不安なことやご不明なことがあれば1年待たずとも産婦人科にご相談いただければと思います。
参考文献
- 1)不妊(症)の定義の変更について.日本産科婦人科学会誌2015;67:35
- 2)松田公志:男性不妊症のアウトライン.岩本晃明, 松田公志(編).男性不妊の臨床,東京;メジカルビュー社,2007;80-87[WHOの調査(Comhaire FH: Male infertility,London:Chapman&Hall Medical,1996)より]