過多月経
過多月経とは、月経の量が異常に多い状態をいいますが、ご自身で月経血の量を正確に測定できるわけではないので、客観的に評価することは難しいです。通常の月経は持続期間が3~7日、経血量は37~43mlが正常とされています。月経の出血量が140ml以上になり、その結果として貧血に陥っている場合が多くなります。しかし、臨床的には患者さんの訴えで判断されるのでそれほど厳密には診断できません。
原因と診断
- ①婦人科器質的疾患
子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症、子宮体がん、子宮頸がんなどがあります。子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症は経腟超音波、MRI、子宮鏡で診断できます。子宮体がん、子宮頸がんは細胞を採取して病理検査で確定診断をします。 - ②婦人科機能性疾患
黄体機能不全(月経周期の高温期が維持できない)や排卵が周期的に来ない場合などで子宮内膜が一部剥離する破綻出血を起こし、結果として過多月経になる場合があります。10代から20代の比較的若年者と閉経近くの40代後半の患者においては、このホルモン周期による病気を念頭に置く必要があり、詳細な問診と基礎体温表やホルモン検査を行い診断します。 - ③内科的疾患
血液の病気など内科的疾患が基となり、血を止める機能の異常により結果として過多月経を起こすことがあります。貧血がないか、凝固機能に異常がないか、肝臓の機能に異常がないか採血を行い診断します。
治療
- ①婦人科器質的疾患
子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症は月経量や貧血の有無、妊娠の希望があるかで治療の内容が変わります。手術としては子宮全摘術や子宮筋腫核出術(開腹、腹腔鏡下)、子宮鏡下子宮内膜ポリープ摘出術,子宮内膜掻爬、子宮内膜アブレーション(子宮内膜を電気的に焼灼する)、子宮動脈塞栓術などを施行します。妊娠の希望がある場合は子宮を残す必要があります。子宮内膜アブレーションや子宮動脈塞栓術は月経血を減らし子宮を残せます。一方、子宮内膜アブレーション後の妊娠は困難なことが予想され、子宮動脈塞栓は子宮への血流が減少することから妊娠への影響はいまだ不明瞭です。
子宮体がん、子宮頸がんは悪性腫瘍ですので進行度により方針が変わります。担当の先生とご相談ください。 - ②婦人科機能性疾患
明らかな器質的異常、悪性所見がない場合、貧血を伴うような過多月経の場合、ホルモン療法(エストロゲン・プロゲステロン配合薬;いわゆる低用量ピル、排卵を抑えることにより月経血が減少する)、レボノルゲストレル放出子宮内システム留置(子宮内に黄体ホルモンを含むY字型の器具を子宮内に留置することで排卵抑制し月経血が減少する)、抗線溶薬(止血作用のある薬)内服を行います。 - ③内科的疾患
内科的疾患の治療を優先していきます。
*過多月経は、ご自身で判断が難しい場合も多いと思います。貧血が徐々に進行すると体が貧血の状態に慣れてしまい、重症貧血になって動悸、息切れなど日常生活が送りづらくなってから受診される方もいます。昼間でも夜用ナプキンがすぐいっぱいになってしまうなど多めの月経血があるようであれば一度婦人科にご相談ください。
参考文献
- 1) L Hallberg, A M Högdahl, L Nilsson, G Rybo : Menstrual Blood Loss--A Population Study. Variation at Different Ages and Attempts to Define Normality Acta Obstet Gynecol Scand . 45(3):320-51,1966:
- 2) 日本産科婦人科学会編. 産婦人科用語集・用語解説集 改定第4版 日本産科婦人科学会,東京,34頁,2018