女性の病気について

女性心身「無月経」

1.)無月経とは

18歳を過ぎても月経(生理)が一度もこない状態を原発性無月経といい、0.5%の頻度とされます1)。また、これまであった月経が3か月以上とまった状態を続発性無月経といい、思春期から閉経期まであらゆる女性が経験する可能性があります。中でも、妊娠中や産後、閉経による無月経は生理的無月経といわれます。

2.)無月経の原因

月経は通常、脳など中枢(視床下部一下垂体)からの刺激が卵巣に働きかけ、卵巣から出る女性ホルモン(エストロゲン)によって子宮の内膜が厚く育ち、受精卵の着床に備えます。しかし、妊娠しない場合には内膜が剥がれ落ちて、月経血としてを通り流出します。つまり、この流れのどこかの部位に障害が起きて、機能しないと無月経になります。

部位別に無月経の原因を示します。中枢性無月経の場合は脳腫瘍や低体重、激しい運動、心因性などが原因となります。卵巣性無月経としては、早発卵巣不全、Turner症候群などの性染色体の異常、手術による卵巣の摘出、癌治療のための放射線療法や化学療法などが原因となります。子宮奇形や閉鎖などは月経血の産生や流出の障害の原因になります。

3.)無月経の検査

月経は14歳までに約98%きます。その為、15歳になっても初経(初めての月経)がこない場合は原発性無月経を疑って、婦人科受診をお勧めします2)診断のためには、身長・体重などの経過がわかる成長記録を確認しながら、手術歴、家族歴、服薬歴や精神・身体的ストレス、内科や精神科などの診療科の受診歴などを丁寧にうかがいます。二次性徴がどれくらい進んでいるか、乳汁などが出たりしていないか、男性化徴候がないかなど身体所見も確認します。婦人科診察として内診(性交症の経験がなければ無理には行いません)なども行います。経腹、経腟または経直腸超音波検査や、骨盤部のMRl検査などの画像検査を行うこともあります。貧血、肝臓機能、女性ホルモンの状況などを採血でチェックするとともに、必要によっては染色体検査を行うこともあります。

4.)無月経の治療

原発性無月経では、その原因や重症度に応じて治療を行います3)。二次性徴を促し周期的な月経がくることが目標ですが、ホルモン療法を行っても性交渉・妊娠・出産などが達成困難な場合もあり、思春期医療に詳しい婦人科医が慎重に対応していくことになります。原因が腫瘍、子宮・腟の月経流出障害であれば身体的ケアのため手術療法を行うこともあります。

続発性無月経では、原因を除く、あるいは変更、改善することを優先します。他の診療科で投薬中の薬が原因のこともあり、その場合には必要性の評価と可能であれば薬剤の変更、無理なダイエットによる低体重が原因であれば食事指導やカウンセリング、原因が明らかなストレスの場合にはできる限りそのストレスを取り除くような指導を行います。その上でホルモン療法により月経の改善に向けた治療をスタートします。注意しなければならない点は、ホルモン療法を行うと、見かけ上月経が再開しますが、原因が改善されなければ、治療を中止すると再び無月経になります。将来的なライフプランをしっかり見据え、女性として思春期・成熟期・更年期とライフステージを乗り越えていくために、心身ともに健康であることが、無月経治療の近道かもしれません。

  • 1) 甲村弘子.思春期の月経異常とその対応. 産科と婦人科2018.Vol85 No12:1431-36
  • 2) 日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会報告.日産婦誌2017 ; 69 : 1429-1440.
  • 3) 最新女性心身医学.本庄英雄 監修.2015.P 104-107 無月経への対応