骨粗鬆症
骨粗鬆症は、骨の強さ(骨強度)が低下して骨折の危険性が高まる疾患です。骨強度は、70%が骨に含まれるカルシウムの量(骨量、骨密度)によって、30%が骨の質(骨質)によって決まると考えられています。骨質には、骨の微細な構造や骨の代謝サイクルなど、様々な要素が含まれます。日本における患者数は男性300万人、女性980万人と推定されており1)、女性に多く見られる疾患です。
骨には骨を吸収する細胞(破骨細胞)と骨を形成する細胞(骨芽細胞)とがあって、本来はバランスを保って働き、古くなった骨を日々新しく作り変えています。女性ホルモンのエストロゲンには破骨細胞の働きを抑える作用があるため、閉経によって卵巣からのエストロゲン分泌が低下すると、破骨細胞の働きが高まって骨の吸収が進み、形成が追い付かなくなります。このようにして骨の代謝サイクルが亢進し、骨密度が低下した状態を閉経後骨粗鬆症と呼びます。閉経後の年数と共に骨粗鬆症は急激に進行し、日本人女性では65歳で3人に1人、75歳で2人に1人が骨粗鬆症になると推定されています2)。
骨粗鬆症患者の特徴は、非常に弱い力が加わっただけで(例えば立っている高さから転んだだけで)骨が折れてしまうことで、これを脆弱性骨折と呼びます。脆弱性骨折を起こしやすい場所として最も重要なのが、背骨(椎体)と股関節(大腿骨近位部)で、その他に腕の付け根(上腕骨近位部)や手首(頭骨遠位端)などがあります。椎体骨折や大腿骨近位部骨折を起こすと、たとえ手術を受けたとしても、痛みや変形のために日常生活が著しく制限されるようになり、場合によっては生命が脅かされます。
女性の平均寿命が87歳を超える超高齢社会の日本において、閉経後骨粗鬆症は誰にでも起こり得る病気です。予防のためにまずできることとして、カルシウム・ビタミンD・ビタミンKなどを含むバランスのよい食餌を摂取し、日光を浴びながら屋外で運動することなどが挙げられます。その上で、機会を見つけて骨粗鬆症検診を受け、ご自分の現状を把握することが重要です。飲酒・喫煙をしている、ステロイド薬を服用している、両親が骨折したことがある、運動をあまりしない、やせている、カルシウムをあまり摂っていない、あるいは月経が不順だった、閉経が早かった、乳がんなどの治療を受けた、などのいずれかに当てはまる人は、特に早めに検診を受けることをお勧めします。椎体や大腿骨近位部の骨折を起こしたり、骨粗鬆症検診で骨密度が低いことが判明したりして骨粗鬆症と診断された場合には、原則として薬物治療が開始されます。現在骨粗鬆症治療薬には、カルシウム薬・女性ホルモン薬・活性型ビタミンD3薬・ビタミンK2薬・ビスホスホネート薬・SERM・カルシトニン薬・副甲状腺ホルモン薬・抗RANKL抗体薬など様々な種類があります。医師とよく相談の上、薬剤を選択するとよいでしょう。
- 1. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会: 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版. p4, 2015.
- 2. 曽根照喜, 福永仁夫: 我が国における骨粗嘉症有病率と国際比較. 日本臨床 62(S2): 197-200, 2004.