気管支喘息(心身症)
気管支喘息とは、気道の慢性炎症や、気道過敏性が存在することで、可逆的な気道狭窄や咳嗽を繰り返す疾患です。慢性化すると気道狭窄が非可逆的、つまりもとに戻らなくなってしまうので、重症度に応じて、発作時だけの対処ではなく吸入ステロイド薬を中心とした適切な治療を継続していく必要があります。
気管支喘息は、風邪などの感染症や、ハウスダスト、受動喫煙などと並び、心理社会的因子が発症や増悪のきっかけになることが知られており、治療指針やガイドラインでも言及されるようになっています。これはつまり、気管支喘息では「身体疾患の中で、発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害がみとめられる病態」と定義されている心身症の病態に当てはまることが多いということですね。気管支喘息が心身症の病態を取りやすいことは、古くから気づかれており、心理的要因が影響することが多い身体疾患としてアレキサンダーが挙げた「seven holy diseases」という7つの疾患の中に、本態性高血圧症やバセドウ病と並んで、気管支喘息も含まれています。
心理的ストレスが気管支喘息の悪化につながる仕組みについては様々な研究が進められていますが、まず、ストレスによるホルモンの変化が免疫機能の変化につながり、気管支喘息が悪化するという生物学的な仕組みが考えられています。また、ストレスにより治療アドヒアランスが低下すること、つまり、薬の吸入や内服、ハウスダスト除去のために必要な掃除等治療のための行動が本来必要なだけ行えずおろそかになってしまうことで、気管支喘息が悪化するという仕組みも考えられます。
気管支喘息の薬物療法はかつてに比べると大幅に進歩しコントロールが容易になってきていることから、以前に比べると心理社会的因子の関与に注目されることは減ってきていると指摘する声もあります。しかしながら、それでもなおコントロールがうまくいかない場合は、一度心理社会的因子の関与を疑ってみるとよいかもしれません。また、治療アドヒアランスを維持することが難しい場合は、内服回数やタイミングなどの工夫がアドヒアランス改善につながることもありますので、主治医とよく相談するとよいでしょう。