女性の病気について

神経性過食症

神経性過食症は、神経性やせ症と並び、「摂食障害」として分類される代表的な疾患の一つです。神経性過食症でみられる症状の一つにまず過食を繰り返すことが挙げられます。過食というのは単なる食べすぎとは異なり、明らかに一般的な量よりも多く、また自分では止められない、コントロールできないという感覚を伴うのが特徴です。また、過食だけでなく、不適切な代償行動(体重を増やさないための行動)として、食べたものを自分で吐き出そうとしたり、下剤をたくさん使ったり、また絶食したり過剰に運動したりという行動がやはり繰り返し見られます。このような行動面の症状だけでなく、自分自身への評価が体型や体重に影響され、少しでも体重が増えると自分には価値がないだめな人間だと思ってしまうというような認知面の症状もみられます。神経性やせ症でも過食がみられることがあり混同されがちですが、やせがみられる時には神経性やせ症の診断を、やせがみられない時には神経性過食症の診断を考えることになります。

神経性やせ症のように低栄養状態は伴わないものの、電解質異常や嘔吐に伴う歯牙の異常などの身体合併症を認めることがあります。またうつ病などの精神疾患を併存することがあるのも神経性やせ症同様です。症状が人前で出ないことが多く周囲には気づかれにくいですが、患者本人の苦痛や日常生活への支障は大きい疾患です。

神経性やせ症と同様、男性でも見られますが女性の有病率の方が高いと報告されています。また、発症や維持には社会的要因、心理的要因、生物学的要因など複数の要因が関わっており、なにか一つに原因を特定できるものではありません。

治療では、「なおりたい、でもこのままでも・・」と揺れ動く気持ちに対して、治療に対する動機づけを維持すること、身体面の合併症があれば対応することなどとともに、過食や代償行動という行動面の変化と、認知面の変化、情動面の変化を合わせて進めることが必要です。認知行動療法をはじめとする高強度の心理療法を用いることもありますし、比較的低強度の心理教育や支持的対応として、食事や生活のリズムの改善などから開始することもあります。いずれにしても心理療法的アプローチが中心となり、併存する症状に対する薬物療法や、家族へのサポート・心理教育等が併用されます。治療は外来診療が基本になりますが、食事・生活リズムの調整や併存する身体合併症・精神合併症の治療のため入院治療を行うこともあります。