睡眠障害
成人の約1/3が睡眠困難(不眠症状)をもち、随伴する日中の支障を経験しているのは10−15%、不眠症の基準を満たすものは6-10%とされています1)。また、多くの報告において、睡眠障害は男性に比べて女性に多く、重症度についても男性に比べて女性の方が高いとされています。そういった睡眠に関する問題のパターンには大きく分けて4つのパターンに分けられます2)。
①寝付けない(入眠困難)
②寝ても何度も目が覚めてしまう(睡眠維持困難)
③朝早く目覚めて、その後眠れない(早朝覚醒)
④眠りが浅い(熟眠障害)
多くの場合には、これらが組み合わさって起こっています。そして、これらが1週間に3夜以上、3ヶ月以上持続して、日常生活に支障が出るようになった状態が不眠症です。育児や仕事などで物理的な睡眠の量が不足しているものは、睡眠障害とは別に、睡眠不足と呼びます。
若年成人の夜間睡眠時間は7時間程度で、高齢になるにつれて時間が短くなります3)。また、それぞれの年代で、質の良い睡眠時間は一定の範囲にあるため、たくさん眠ろうと横になっていても、長く眠れるわけではなりません。むしろ、長く横になっていると、眠りは浅くなり、睡眠の質の低下につながります。そのため、不眠症の目標睡眠時間は年齢に応じて、6−7時間に設定して、寝床についてから起床して起き上がるまでの時間は7時間以内にすると良いとされています。
また、不眠の期間で分けると
①数晩だけの一過性不眠
②3週間未満の短期不眠
③3週間以上の長期不眠
に分けられます。
一過性不眠や短期不眠は、一時的なストレスや不安、引っ越しや旅行といった環境変化が原因となりますが、長期不眠では身体面や精神面に何らかの病気が潜んでいることもあります。
1)身体的な原因
例:更年期症状に伴うほてりなどで汗をかき、寝つきが悪く、何度も起きてしまう。また、睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群など。
2)生理的な原因
例:月経困難(生理痛)、月経前症候群(PMS)などの女性特有の体調の周期での不眠
3)心理的な原因
例:不眠症状が起こった頃に人事異動があった、といったの環境の変化
4)精神的な原因
例:抑うつ的な状態では、大変多くの場合に不眠症状が並存します
5)薬理学的な原因
例:薬の相互作用、副作用が不眠の原因を作ることがあります
このように、原因を探った上で、現在では、睡眠の環境調整や認知行動療法、薬物療法などが治療法として用いられています。特に、薬を使わない方法としては、睡眠日誌の記載を行いつつ、寝床で過ごす時間を七時間以内に制限したり、眠たくなるまで寝床につかないようにしたり、寝付けない場合には寝床を離れるといった、認知行動療法などが有用です。自身にとってのストレス原因を見極めそれを取り除くことや身体的な問題を確認した上でも睡眠障害が解決しない場合には、ぜひ専門医を受診しましょう。
- 1)降旗隆二,今野千聖,鈴木正泰,ほか:一般成人における不眠症状と性差について,女性心身医学19(1):103-109,2014
- 2)American Psychiatric Association: Diagnostic and statistical manual of mental disorders. 5th edition, American Psychiatric Publishing, Arlington, 2013
- 3)本庄英雄監修:最新 女性心身医学,東京,ぱーそん書房,2015