ほてり
「ほてり」は更年期症状の一つとしてよく知られています。突然、顔面から頭部・胸部にかけて「カーッ」と熱くなったり、顔が紅潮したり、発汗したり、動悸をともなうこともあります。「暑い空間ではないのに突然汗が止まらなくなる」「頭や首のうしろから汗がでてくる」「汗だくになったかと思うと、急に身体が冷えて寒気を感じる」という声がよく聞かれます。更年期症状場合の「ほてり・のぼせ」は「ホットフラッシュ」とも呼びます。ホットフラッシュは、時や場所を選ばず、1日に数回起こることがあり、数か月で落ち着く人から数年間続く人など様々です。
ホットフラッシュの主な原因は、卵巣機能低下が影響していますが、加齢に伴う身体的変化、心理的要因、環境要因が複合的に影響していると考えられています。ホットフラッシュや発汗がみられることで、睡眠が阻害されたり、外出が不安になったりと日常生活に支障きたす場合があります。日本産婦人科学会では「更年期に現れる多種多様な症状の中で、器質的変化に起因しない症状を更年期症状と呼び、これらの症状の中で日常生活に支障きたす病態を更年期障害と定義する」としています1)。ホットフラッシュや発汗により日常生活に支障をきたす場合は更年期障害の治療を検討してもよいでしょう。
更年期障害のうち、「ほてり」「発汗」など血管運動神経症状の場合、ホルモン補充療法の有効性は高いことが明らかとなっています2)。ホルモン補充療法だけでなく、漢方療法で症状を緩和することもできます。「ほてり」の症状は、甲状腺機能亢進症や自律神経失調症の場合にも同じような症状がみられますので、更年期障害の治療をする際は、他の疾患によるものではないか、鑑別診断して治療を進めていくこととなります。
日常生活に支障がなければ病院へ行く必要はありませんが、これを機会に自身の生活習慣や健康を見つめ直してみましょう。加齢に応じた栄養バランスや運動、良質な睡眠、心身のリラックス、規則的な生活リズムに整えるなど、健康的な生活習慣を心がけることは更年期症状の緩和にも効果的です。
- 1) 更年期障害の診断上の留意点は. 日本産婦人科学会編集. 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2020. 東京:日本産婦人科学会事務局;180-181. 2020
- 2) 更年期障害への対応は. 日本産婦人科学会編集. 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2020. 東京:日本産婦人科学会事務局;182-184. 2020