疲れやすい
病院で検査をしても「異常なし」といわれる症状の中で比較的多いのが「疲れやすい」という症状です。最近すぐに疲れる、仕事でがんばりがきかなくなった、以前ほどの量の書類が読めなくなった、執筆量が減った、夕方からはぐったりなるなど、さまざまな表現法がある症状です。女性を対象とした医学調査では、何か調子が悪いと感じた女性の6-7割が疲れやすい、からだがすぐにだるくなると答えています。動悸がする、頭痛がある、夜眠れない、気が沈むなど(いずれも3-4割)の症状よりも高い頻度で女性は疲れやすさを感じています。程度にもよりますが、中等度以上になると「倦怠感、脱力感」という臨床症状となり、女性の更年期のうつ病では最も多い症状(うつ病の41%にみられます)となります。また、健康感を損なうとか日常生活の充実度の低下というようなクオリティ・オブ・ライフ(QOL)への影響をみると、「倦怠感、脱力感」という症状が「睡眠障害」に次いで、それを障害することが知られています。つまり、疲れやすいという症状が強くなり、長く続くと、人は健康感をなくしやすくなり、生活に楽しみを失う体調になるのです。
この症状は、なにも女性に特徴的なものではありませんが、月経前の数日間や産後、あるいは更年期という、女性だけのライフステージでは、こころの動きの関与もあり自律神経失調状態となりやすいのです。症状を発症する閾値が低くなるといってもいいでしょう。漢方医学では、いわゆる元気の消耗(エネルギーがなくなったという感覚です)と捉えて、「気虚、血虚」という病態で疲れやすいという症状が出現すると考えられています。器質的な問題(貧血や甲状腺機能低下症等)を否定できれば、不定愁訴として治療します。
疲れやすいという症状は精神障害としてのうつ病にも高い頻度でみられる症状ですから、軽いうつ状態でも比較的よくみられます。そこで、自律神経調整薬とともに抗うつ剤(スルピライド、SSRI、四環系抗うつ剤)を服用してもらうこともあります。漢方薬では補気剤(補中益気湯、六君子湯等)や補血剤(人参養栄湯、十全大補湯等)が中心となります。更年期の世代では短期間のホルモン療法により早く症状がなくなることもあります。
疲れやすいという表現での症状の訴えの際には、精神的ストレスが原因となる心身症の場合もあり、服薬ではなくむしろカウンセリングが必要なこともありますので、受診した先で医師に、生活環境のことや、家庭のこと、職場の仕事内容や友人との人間関係などをじっくりと聞いてもらうことも大切でしょう。
薬局でビタミン剤でも買って飲めば翌日には良くなるだろうと軽く考えがちですが、専門医でなければ治せない「疲れやすい」もあることを知っておいてください。