女性の病気について

性感染症(STI: Sexually Transmitted Infections)

STIとは、性行為あるいは性行為に類似する行為によって感染する疾患をいいます。性行為に類似する行為とは、口と口、口と性器、口と肛門との接触あるいは肛門性交などを指しています。今まではSTD(Sexually Transmitted Diseases)という英語が使われていましたが、Diseasesとは一般に発病した状態を言うものの、多くの性感染症は自覚症状もなく感染を拡大させてしまうことから、最近ではSTI(Sexually Transmitted Infections)という表現が使われています。

STIの種類としては、細菌によるもの(梅毒、淋病、軟性下疳、鼠径肉芽腫症など)、ウイルスによるもの(性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、ウイルス性肝炎、AIDSなど)、細菌よりも小さくウイルスよりも大きい中間病原体と呼ばれるクラミジアによるもの、真菌(かび)によるもの、原虫によるもの(トリコモナス症、アメーバ赤痢など)、寄生虫によるもの(疥癬、毛じらみ症)など多数あります。性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、毛じらみ症のように外見から確認できるものもありますが、ほとんどのSTIは検査が行われて初めて感染に気付くのが特徴です。

STIの特徴として、①男女差別をしない、②年の差を気にしない、③顔で区別しない、 ④成績で選ばない、⑤経済力を問わない、⑥セックス経験レベル不問、⑦愛は勝たない(北村邦夫著:「ティーンズ・ボディーブック」、扶桑社から)などが挙げられます。言い換えれば、性行為が行われるならば誰もがかかる可能性があることを意味しています。

よくAIDS予防に向けたメッセージとして、「不特定の人との関わりを持つな、ステディな関係を築け」と言われますが、確かに不特定多数の関係はリスクが高いとはいえ、ステディな関係が安全とは限りません。というのは、過去のセックス相手が一人であったとしても、相手が複数の人との関係があれば自分に感染することになります。コンドームを使用するなどの予防策がきちんととれないと、「STIネットワーク」と呼ばれる想像を超えたSTIの広がりが起こってしまいます。「カレシの、元カノの、元カレを知っていますか」という公共広告機構のメッセージを真摯に受け止めることが大切です。

しかし、STI予防は決して難しいことではありません。感染には、①感染源、②感染経路、③感受性のある個体、という三つの原則が必要です。例えばSTIの代表格HIV/AIDSについて見てみましょう。言うまでもなく①感染源はHIV感染者の存在です。国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、2006年末の全世界のHIV感染者が推計3,950万人(3,410~4,710万人)と報告しています。HIV感染者は地球上150人に1人くらいの割で存在することになります。②感染経路については、世界全体で見れば感染の7割が異性間で、1割が同性間で、5%が薬物によって起こっていると言われています。8割近くは性行為によるものです。③感受性を高めてしまう最大要因は性感染症にかかること。イタリアでの研究によれば、感染の既往のない人に比べて、HIVに感染する危険性は、外性器にイボが出る尖圭コンジロームの場合には11.4倍、クラミジアでは3~4倍となります。性器が不潔になっていると感受性を高めるとも言われます。

この三原則のうち一つでもブロックできれば感染予防が可能になります。性行為を避けることが最も有効な予防法であることは言うまでもありませんが、それが難しいというのであればコンドームを最初から最後まで使い通すことです。パートナーが変わるたびにお互いに性感染症の検査をして、結果によっては早期に治療を開始し感受性が高まるのを未然に防ぐことも重要です。このような感染の科学を身につけることで、HIV/AIDSを含めた性感染症を予防することができます。