排尿トラブル(排尿障害)
1.排尿障害とは
排尿障害とは、膀胱に尿を貯めて、貯まった尿を体の外に排泄するという排尿サイクルの過程に異常をきたした状態のことを指します。この排尿サイクルの異常は、大きく分類すると、畜尿障害(尿をうまく貯められない)と、排出障害(尿がうまく出せない)の2つに分類されます。
1)畜尿障害
蓄尿障害とは、尿をためておくことができなくなる障害です。膀胱排尿筋の過活動や、膀胱出口の抵抗が弱くなる、尿道閉鎖圧が低下するなどが原因となり、尿失禁や頻尿が生じます。
尿失禁には様々な状態があります。咳やくしゃみ、重いものを持った時に尿が漏れる「腹圧性尿失禁」と、急に尿意が強くなる尿意切迫感がでてきて尿が漏れる「切迫性尿失禁」の2つが代表的な尿失禁になります。どちらか一つの場合もありますが、両方が存在する「混合性尿失禁」もあります。
頻尿は、尿の回数が多い状態をいいます。水分の摂取量などによって変わりますが、大量の水分をとっていない場合は、通常日中に8回以上、夜間は2回以上の場合は頻尿といえます。頻尿のほかに、尿意切迫感や尿失禁があり、日常生活に支障が生じている場合には治療を行います。
また、尿失禁や頻尿が生じる状態に「過活動膀胱」があります。過活動膀胱は、膀胱が過敏になって尿が十分にたまっていなくても、意思とは関係なく膀胱が収縮する状態です。その為、急に尿意が強くなる尿意切迫感、切迫性尿失禁、昼間頻尿、夜間頻尿の4つの症状がみられます。
2)排出障害
膀胱の排尿筋の収縮力が低下したり、膀胱の出口の抵抗が増大したりして生じます。排出障害には、残尿感(排尿後に尿が残っている感じ)と、排尿後尿滴下(排尿直後に意図せずに尿が出てしまう)の症状がみられます。子宮がんの手術などにより膀胱がきちんと収縮せずに尿が排出できない膀胱収縮障害と、前立腺肥大や尿道狭窄などによる尿道通過障害があります。
2.排尿障害の診断
排尿状況の問診やアンケート調査結果、基礎疾患などの詳しい状況を把握します。また、尿検査、場合によっては超音波検査や尿流量検査などを行います。これらの問診や検査結果を踏まえて、障害のタイプを診断します。
3.排尿障害の治療
排尿障害の治療法には、生活習慣の改善、行動療法、薬物療法、手術療法があります。
生活習慣の改善としては、便秘の改善、カフェインやアルコールの過剰摂取の是正などがあります。食生活を見直すことや、適度な運動が推奨されます。そして、排尿障害は自尊心や羞恥心に影響を与えます。尿失禁を気にして、外出や水分摂取を控えることや、緊張やストレスが強いと不安やうつ症状が出現してきます。生活状況の改善とともに、メンタルサポートが重要となります。
行動療法には、膀胱訓練と骨盤底筋体操などがあります。膀胱訓練とは、排尿の時間を設定して、排尿習慣をつけて、排尿間隔を少しずつ長くしていく訓練です。骨盤底筋体操は、骨盤底筋群の筋力をつけて、尿道が閉じる力を補強します。立位、座位など様々な体制で肛門や腟を締めるようにするトレーニングです(腹圧性尿失禁の対処方法/日本コンチネンス協会 https://www.jcas.or.jp を参照)。
薬物療法は、排尿障害のタイプや症状によって異なります。手術療法は、排尿障害のタイプや重症度などを考慮して選択されます。