女性の病気について

乳汁分泌

産褥期には生理的な変化として充分な乳汁分泌が確保されています。これに対し、産褥期以外に乳汁分泌が見られる場合を乳汁漏出症と呼んでいますが、その原因としてプロラクチンと呼ばれる下垂体ホルモンの分泌増加、あるいはプロラクチンに対する乳腺の感受性上昇が原因となっています。

乳汁分泌がある場合、約2/3の症例で排卵障害などの月経異常の合併が見られますが、これはプロラクチンの分泌亢進が起こり、プロラクチンが排卵に必要なホルモンの作用を阻害するために起こっている症状です。ただし、プロラクチン分泌過剰があっても必ずしも乳汁分泌を伴うとは限らず、また逆に乳汁分泌があっても血中プロラクチン値が必ずしも高値を示すとは限りません。乳汁分泌を伴う無月経症を乳漏性無月経、またプロラクチンの分泌亢進が存在する場合を高プロラクチン血症と呼んでいますが、プロラクチン分泌を亢進させている原因によっては治療が必要です。

高プロラクチン血症の原因

生理的条件下ではプロラクチンの分泌は視床下部から分泌されるドーパミンと呼ばれる物質により抑制を受けています。何らかの要因でこの抑制が解除されますと下垂体からのプロラクチン分泌が増加し、乳汁分泌や月経異常を来すようになります。ドーパミンの分泌を抑制する原因として最も頻度が高いのが薬剤の服用による場合で、向精神薬、抗潰瘍薬の服用が有名です。また、ドーパミンは視床下部から分泌されていますので視床下部の器質的な異常がある場合(腫瘍や脳外科的主手術など)にも分泌亢進が見られます。

これに対し、下垂体に異常があってプロラクチンの分泌が亢進する場合があります。最も多いのが下垂体にプロラクチン産生腫瘍が発生する場合で、高プロラクチン血症の1/3はこれによるとも言われています。プロラクチン産生腫瘍は良性腫瘍ですので直接命に関わることはありませんが、サイズが大きくなりますと近傍への影響が出て、頭痛や視野狭窄、視力低下などを招くようになります。また、プロラクチンは甲状腺刺激ホルモンにより分泌が促進されますので、このホルモンが分泌過剰な状態、すなわち甲状腺機能低下症でも高くなります。

1. プロラクチン産生腫瘍
2. 視床下部障害
3. 薬剤性(向精神薬、抗潰瘍薬、経口避妊薬など)
4. 原発性甲状腺機能低下症
5. 胸壁疾患(胸壁の手術、外傷、帯状疱疹など)
6. その他(ストレスなど)

高プロラクチン血症の取り扱い

1)診断
本症を疑う場合には、血中プロラクチン値を測定し、これが高い場合にはその原因検査として薬物服用歴の確認、および必要に応じて下垂体の画像検査(CT、MRIなど)を行ないます。プロラクチン値が高い、あるいは頭痛や視野狭窄、視野障害などの症状があり下垂体の腺腫の存在を疑う場合には画像診断は必須です。

2)治療
治療の原則は原因除去です。薬物服用による場合には減量もしくは休薬(可能なら)を考えれば良いでしょう。乳汁分泌が見られるだけで、他に特別な異常や兆候がない場合には経過観察も可能です。
直径が1cm以上の下垂体腺腫がある場合には、外科的摘出をまず考慮しなければなりませんが、そうでない場合にはドーパミンアゴニスト製剤の服用で多くの場合管理可能となります。
無月経を伴う場合には、月経を誘発、また排卵障害があり不妊を訴える場合にはその治療が必要となります。