女性の病気について

子宮頸癌

子宮の入り口付近、「子宮頸部」にできる癌を「子宮頸癌」といいます。以下に子宮頸癌について概説します。

1)原因

原因のほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスによるものです。HPVは人と人の性的接触の刺激によって感染します。湯船や温泉、プールなどでは感染しません。遺伝も関係ありません。性的接触がない場合にHPVに感染することは稀です。HPVは200種類以上のタイプがあり子宮頸癌に対するハイリスクのタイプや尖圭コンジローマなどから検出されるローリスクのタイプなどがあります。

2)臨床症状

HPVに感染しても無症状です。性行為によって知らない間に感染が起こります。ハイリスクHPVは子宮頸癌を引き起こすウイルスですが、実際に子宮頸癌になるのはごく一部です。HPVは検査で陽性になっても、増殖が免疫で弱まったりします。ハイリスクHPVが持続感染した場合は異形成といわれる前癌状態を数年から数十年経てから癌になります。異形成の時期では症状がありませんが、癌が進行すると性交時の出血や匂いのある帯下(おりもの)が増え、さらに病状が進行すると、下腹痛・腰痛や血尿などが起こることもあります。

3)診断

現在、行政による子宮がん検診が行われていますので、対象者は積極的に受診することが大切です。東京都では、20歳以上を対象として実施していますが、検診率は30%程度で20歳代が少ないのが現状です。細胞診で異常が見つかった場合には、さらに腟拡大鏡(コルポスコープ)を使って詳しく観察し、一部の組織を採取して顕微鏡で診断します。

4)治療

進行状態により治療法は大きく異なります。初期であれば、病巣のみの切除(円錐切除)でよく、その後に妊娠も可能です。一方浸潤癌の場合は進行度により、子宮と付属器の他、所属リンパ節を含む広い範囲で切除することがあります。放射線、抗癌剤による化学療法が選択されることもあります。またこれらの治療で命が助かっても妊娠ができなくなり、排尿障害やホルモン不足など様々な後遺症でつらい思いをする患者さんがいます1)

5)予防

日本では毎年1万人以上が子宮頸癌になり、2800人近くが亡くなっています2)。また子育て世代の若い年代の子宮頸癌も増えています。HPVワクチンは、子宮頸癌の原因となるHPVの感染を予防するワクチンです。日本では、HPVワクチンは2013年に定期接種となりましたが、その直後から接種後の副反応の詳細を調査するために「積極的な勧奨接種」が中止されました。その間に国内外からの報告や最新の知見をふまえ、ワクチンの安全性について懸念が認められないことや接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ることなどを確認したことから、2021年11月、厚生労働省は子宮頸癌ワクチンの定期接種を再開することを決めました。HPVワクチンは初めての性交渉前に接種することが望ましいと考えられており、9歳から接種が可能です。万が一、HPV ワクチンを接種した後に気になる症状が現れたときには、接種を行った医師またはかかりつけの医師に相談の上、協力医療機関の受診を検討してください3)

引用文献